スリーピングマット(登山マット)の選び方【寝心地、断熱、使いやすさから考える】

登山装備

テント泊で寝袋の下に敷くスリーピングマット(登山マット)。スリーピングマットは、テント泊の寝心地を最も左右するアイテムです。意外とスリーピングマットは種類が豊富で、何が良いのか迷うもの。
今回は、寝心地、断熱、使いやすさから考えた、自分に合ったスリーピングマットの選び方を書いていきます。

スリーピングマットの役割【寝心地と断熱】

スリーピングマットの役割は、2つあります。横になったときの「寝心地」と地面からの「断熱」です。

■寝心地
テントを張る場所は固く、しかも小石や凹凸がある地面がほとんどです。そんな環境で快適に寝るために、スリーピングマットは発泡素材や空気の層でクッション性を持たせています。クッション性は素材や構造、厚さなどにより異なり、横になった時の快適性も異なってきます。
ベッドのマットレスと同じように、どれが最も寝心地が良いと感じるかは個人差もあるため、実際に店頭などで試してみるとよいです。

■断熱
スリーピングマットのもう一つの役割は、地面との断熱です。夏はそれほど重要ではありませんが、雪山では雪の上で寝るため地面との断熱は非常に重要です。たとえ暖かい寝袋に入っていたとしても、寝袋の地面側は体重でつぶれてしまい、その保温性は発揮されません。冷たい地面から体温が奪われないように、マットには断熱性が求められます。

マットは3つの種類がある

スリーピングマットの役割を踏まえ、マットの選び方を考えていきます。マットの種類は、以下の3つのタイプが現在の主流です。

  • クローズド・セル
  • エア注入式
  • 自動膨張式

まずは、各タイプの特徴を理解し、どのタイプのマットにするかが重要です。それぞれ詳しく解説していきます!

クローズド・セル

ウレタンなどの発泡素材を使った、最もシンプルなタイプ。折りたたみ式と、ロール式とがあります。

<メリット>
・空気を入れる必要がないため、扱いがラク
・値段が安い
・耐久性があるため、山行中のパンクリスクがなく、長く使える

<デメリット>
・収納サイズが大きくてかさばる
・断熱性能の高いモデルはないため、厳冬期にコレ1つでは厳しい

エア注入式

内部が空洞になっており、空気を吹き入れて膨張させてクッション性・断熱性を作り出すタイプ。使用する際には空気を入れる手間がありますが、収納時のサイズがコンパクト。パンクするリスクがあるため、リペアキットを合わせて持っていくと安心です。

<メリット>
・収納時にコンパクトなため携行しやすい
・断熱性能の非常に高いモデルがある

<デメリット>
・自分で空気を入れる必要がある(けっこう疲れます)
・値段が高い
・パンクのリスクがある(私は、5年間で2回あり)

自動膨張式

バルブを開けると、内部のフォーム材の反発力によって自動で空気がマット内部に入るタイプ。ウレタンフォームと空気の両方によってクッション性・断熱性を作り出している。性能面は前述した「クローズド・セル」と「エア注入式」の中間に位置します。
なお、自動で完全に膨らむわけでなく、最後に少量の息を自分で吹き入れる必要があります。

<メリット>
・エア注入式に比べ、自分で空気を入れる量が少なくて済む
・パンクしても、最低限のクッション性と断熱性を維持できる

<デメリット>
・エア注入式に比べるとかさばる
・クローズド・セルに比べると値段が高い
・やや重量のあるものが多い

補足(寝心地について)

寝心地については、3つのタイプに優越をつけるのは難しいところです。私自身は寝返りを打ったりしたときに動きのないクローズド・セルが寝やすいと感じています。エア注入式だと、どうしてもぐにゃぐにゃ動いて気になります。
一方で、エア注入式はマット厚があるため、小石の凹凸が気にならず快適と感じる方もいます。
寝心地に関しては、仲間のものを借りたり店頭などで試してみることをおすすめします。

温かさ【厚さではなくR値で見る】

前述したとおり、雪山では断熱性能は非常に重要となります。では、断熱性能はどう見ればよいか?というと、「R値」という数値が使われています。R値が高ければ高いほど、マットの断熱性能が高く温かいということになります。断熱性能は単純にマットの厚さで決まるわけではなく、内部の構造や素材にも影響を受けるため、R値で比較するようにしましょう。なお、R値は加法のため、例えばR値2のマットとR値2.4のマットを重ねて使った場合は、R値4.4はとなります。

どれくらいのR値が良い?かというと、使用する環境や、個人差によって変わってきます。参考までに、スリーピングマットのメーカーであるTHERMAREST(サーマレスト)の推奨する基準を表にまとめます。

使用環境 R値
真夏 2未満
真夏と真冬の間 2以上
雪の上や寒い環境下 4以上
北極など極寒の地 6以上

表を参考に、寒がりな方はR値をやや大きめに、暑がりの方はR値を小さめに考えるとよいと思います。

マットの長さの考え方【短めでもOK】

長さは多くのメーカーで、同じシリーズで2~3種類を用意しています。おおよそショートサイズ120cm~レギュラーサイズ180cmほどです。
全身をカバーしたいのであれば、当然レギュラーサイズになりますが、荷物を最小限に抑えたいのであればショートサイズがオススメです。また、テントがやや狭い場合にもショートサイズのほうがコンパクトで取り回しが良いです。私個人は、夏冬ともにショートサイズを使用しています。
ショートサイズを使用する場合は、全身はマットに乗りません。そこで、肩から腰までをマットでカバー、頭には衣類を入れたスタッフバックを枕に、下半身の部分にはバックパックを敷いて寝ると断熱性をある程度確保できます。

それでもやはり、ショートサイズの断熱性や寝心地はレギュラーサイズには劣るため、それらを優先したいのであれば、レギュラーサイズを選択しましょう。

おすすめのスリーピングマット

私を含め、私の周りの多くの方が使っているスリーピングマットのメーカーが、THERMAREST(サーマレスト)です。サーマレストは歴史も長く最も信頼できるメーカーですので、今回はサーマレストのおすすめのマットを2点紹介します。

クローズド・セルタイプ 【Zライトソル】

パタパタと折りたためる、クローズド・セルタイプのマットです。サイズはショートとレギュラーがあります。軽量で壊れにくく、価格も手頃なので特に初心者の最初の1枚におすすめです。長いレギュラーサイズをとりあえず買っておき、かさばるようだったら短くカットすることもできます。

Zライトソル ショート レギュラー
サイズ 51×130cm 51×183cm
重量 290g 410g
厚さ 2cm 2cm
収納サイズ
(長さ×直径)
51×10×14cm 51×13×14cm
R値 2.0 2.0
価格 ¥4,800+税 ¥6,200+税

エア注入式【ネオエアーXライト】

ライト&ファストに適した、軽くてコンパクトなマットです。とにかく荷物をスマートにしたい方におすすめ。冬山にも対応できる断熱性能なので、汎用性高く幅広く使用できます。やや高価なのが難点です。なお、冬山に行くけど寒がりという方は、より断熱性能の高いモデル「ネオエアーXサーモ」を選びましょう。

ネオエアーXライト ショート レギュラー ラージ
サイズ 51×119cm 51×183cm 63×196cm
重量 230g 350g 460g
厚さ 6.4cm 6.4cm 6.4cm
収納サイズ
(長さ×直径)
23×9cm 23×10cm 28×11cm
R値 4.2 4.2 4.2
価格 ¥19,000+税 ¥24,000+税 ¥29,000+税

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